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人生を長く楽しく過ごす秘訣は、毎日に刺激をプラスすること。
いつまでも健やかに暮らすための住まい選びについて、東京都健康長寿医療センター研究所の大渕修一さんに寄稿いただきました。


生活機能の低下を防ぐ 運動・食事・社会参加

人は年を取ると少しずつ足腰が弱くなり、物忘れが激しくなり、人との交流が億劫になります。病気にならないまでも手助けや介護が必要となってきます。
このように心と体の働きが弱くなり、生活機能が衰えた状態を「フレイル」と呼びます。2014年に日本老年医学会によって定義づけられた新しい言葉で、健康で長寿を目指すために重要なキーワードです。耳慣れない方がいるかも知れませんが、これを機にぜひ覚えてください。

シニア向け住宅を選ぶときに、「ケアされること」「楽に暮らすこと」に目がいきがちですが、ケアを必要としない、生活機能の衰え(フレイル)を防ぐサポート機能の充実があるかどうか。これが、シニア向け住宅を選ぶときの新たな着目点になります。

これまでフレイルは加齢現象ですから抗えないことと考えられてきましたが、ちょっとした工夫で改善できることが近年わかってきました。加齢とともに低下するわけではないことがデータで裏付けられたのです。人は心がければ改善するし、何もしなければ衰えていきます。
高齢期にある読者なら実感されることもあるのではないでしょうか。衰えは感じつつも、新しい発見をするときもあるし、成長を感じるときもあることに。シニア=ケアされる存在と定義づけられることに違和感を覚える人も少なくありません。

生活機能の衰え(フレイル)を防ぐためには、適度な心身の活動、豊かな食事、そして自分の心身に合わせて参加できる社会が必要です。この三つの柱を応援する+αの機能がこれからのシニア住宅に求められます。
たとえば、筋トレが手軽にできるトレーニングルーム。足腰が弱くなっても食事を作る意欲が湧き、みんなで食事を作ることのできる工夫されたキッチン。
特別に意識しなくてもコミュニケーションが生まれる縁側のような空間や、新しい活動にチャレンジしたいと思える環境が望ましいです。暮らしの充実度が高まれば、生活機能の衰え(フレイル)を防ぐことができます。


シニア向け住宅に求める二つの機能とは?

シニア向け住宅を選ぶときに着目してほしい点は〝生活機能の衰え(フレイル)の予防〟と〝ケアのしやすさ〟の二つです。詳しく見ていきましょう。

生活機能の衰え(フレイル)予防
最初のポイントは周辺環境です。日常の買物ができるスーパーマーケット、文化施設、公園、駅、医療機関などが歩いていける範囲にあるとよいです。すべて徒歩15分圏内にあると理想的ですが、難しい場合には、シニアカーやゴルフカートのような乗り物が利用しやすい環境であってもよいです。すべてを叶えられない場合は、優先順位をつけてみてください。

次に大切なポイントは意欲の維持です。生活する上での意欲を維持するためには、社会的な役割があってその中で誰かに必要とされたり認められたりする環境がよいでしょう。1週間誰とも顔を合わせることがないような環境で、心身機能を維持する意欲を保ち続けるのは難しいことです。
公民館やボランティアセンターなどを訪れて、自分が参加できそうな活動があるのかを調べてみましょう。近年のシニア向け住宅では、サークル活動や文化・スポーツの教室が充実しているところもあるので、それも注目してください。

住宅内でのポイントは食事と友人との交流です。生活機能の衰え(フレイル)を予防する上で食事はとても大切です。肉料理の日もあれば魚料理の日もある、和食もあれば中華もあるといったような、バラエティ豊かな食事が望ましく、そのためにいつまでも自分で食事が作れる環境をととのえることが一つの方法です。
かがまなくてもよい位置の電子レンジやオーブン、疲れたときには座って台所仕事ができるシンクなどの工夫がポイントとなります。
レストランを持つ共同住宅では、どのようなメニューが用意されているかを事前にチェックしてみてください。高齢期には食欲も低下してきます。
食欲をそそるメニューかどうかは今考えている以上に重要になってきます。

家族や友人を招きやすいかどうかも大きなポイントとなります。突然の来客でも日常的な物品を目隠しやすいように収納が充実しているかどうかに着目してください。
自分のプライベート空間に人が立ち入ることに抵抗がある場合は、人を招いておもてなしができるような共同設備がある住宅もよいです。

高齢期の活動のエネルギーは人との交流から生まれます。準備や片づけで疲れてしまい、人を招くのが億劫になると次第に社会的な交流が損なわれ、エネルギーが沸かなくなってきてしまいます。

ケアのしやすさ①〈身体機能低下への配慮〉
どんなに気をつけていても、いつしかケアが必要になることもあります。このときに最も重点を置きたいのは自尊心の保持です。
特に排泄のケアを他人に任せるほど自尊心を傷つけられることはありません。
車椅子や歩行器を使うことも想定して広い動線が確保できているかどうか。
そして寝室を中心としてトイレと風呂のアクセスがよいかどうかが重要な注目ポイントになります。

ケアのしやすさ②〈認知機能低下への配慮〉
認知機能が衰えても住みやすい住宅であることは重要です。
収納がすっきりとしていて不必要な物が視覚に入りにくい住宅は、認知機能が低下しても混乱が起こりにくいことが分かっています。
一方で、生活に必須なものは視覚に入りやすくする工夫があるのもよいです。たとえば、夜にベッドから起きるとトイレの電気が灯り、多少寝ぼけていてもトイレがはっきりと認識できるようなシステムが備わった住宅が考えられます。
この分野は日進月歩なので、これらを組み入れやすいインターネットの環境が整っているかどうかも注目点になります。

このようにシニア住宅を選ぶときの注目点は、〝生活機能の衰え(フレイル)の予防〟と〝ケアのしやすさ〟の二つの機能が備えられているかどうかです。単に楽に暮らせることを基準にするのではなく、刺激にあふれワクワクする環境であるかどうか。それらのポイントに着目して、日々の暮らしが豊かになる、自分にとって適した住まいを選んでください。


東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム
研究部長 大渕修一

理学療法士、医学博士。介護予防の第一人者で、専門は、理学医療学、老年学、リハビリテーション医学など。 厚生労働省の介護予防事業立ち上げ時から携わり、2015年の介護保険法改正により「地域ケア包括システム」のひとつの事業として創設された「介護予防・日常生活支援総合事業」のサービス「運動器の機能向上マニュアル」の作成に関わる。第72回保健文化賞受賞。


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