「マイホームに終生住み続けよう」と考えるシニアの方も多いと思いますが、最近は、新たな住まいを探して住み替える人も増えています。
“人生100年時代”を迎え、長い高齢期を過ごすことを考えると、築年数が長い住居は、そのまま住み続けるには不都合が生じることも珍しくありません。だから、高齢期に「住み替え」を検討することはとても賢明な選択と言えます。
まず心がけるべきは「要介護リスク」でしょう。
政府が発表している各種のデータを読み解くと、年齢階級別の「要介護認定率」がわかります。要介護認定とは介護保険制度で介護サービスを利用するときの必須の手続きで、高齢者一人ひとりの「介護の必要な程度」を統計的に数値化して表すものです。
その対象の目安は、杖や歩行器などを使って外出する、あるいは物忘れが進んで金銭管理が少し不安になったくらいの軽度の状態から、食事を摂るにも寝返りや排泄をするにも介助が必要といった重度の状態まで、幅広く要介護(要支援)認定が行われています。
その認定率は、65~69歳の場合はわずか2.8%ですが、90歳以上では73.1%とおよそ4人に3人が対象となり、多数を占めています。

一方、厚生労働省が示す「平均余命」※のデータでは、現在65歳の男性は平均で約20年、女性で平均約25年の余命を過ごすと推測されています。
つまり、90歳代まで生きるのは常識的であり、100歳を超えて人生を過ごすことを前提とした住まい探しが必要となります。そしてそのときには「要介護状態になっても住み続けることができるかどうか」を念頭に置くことが不可欠です。
シニア期の住まいのニーズの増加を踏まえ、厚生労働省や国土交通省などがさまざまな施設・住まいを制度化し、整備が進んでいます。また、民間事業者も多彩なタイプの高齢者向け住まい(有料老人ホームなど)を各地で整備しています。これによってシニア期の住まいの選択肢は格段に拡大しています。気になる住宅や施設を見つけたら、まずは資料を取り寄せ、現地に足を運んでみてください。
その際、立地条件や費用面だけでなく、要介護状態となった際の対応の状況も踏まえ、選択をしていくべきでしょう。さらに、要介護状態になれば、医療費や介護保険のサービス利用料の負担も新たに発生します。その費用についても想定しておくことが欠かせません。
※厚生労働省『令和2年簡易生命表』